脂肪肝
脂肪肝とは
肝臓に脂肪が必要以上に蓄積されている状態を脂肪肝と言います。具体的には5%以上の肝細胞に脂肪が溜まっていると確認された場合、脂肪肝と診断されます。
脂肪肝は大きく、アルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に分けられます。前者は、アルコールの過剰摂取が原因で発症する脂肪肝です。後者は、お酒以外の原因で肝細胞に脂肪が蓄積している状態です。原因としては肥満、2型糖尿病、脂質異常症などが挙げられます。NAFLDはさらに非アルコール性脂肪肝(NAFL)と、NAFLが重症化して肝臓に炎症がみられる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に分けられます。
主な症状ですが、ある程度まで病状が進行しないと症状はほとんどありません。早期発見するためには、定期的に健康診断を受け、脂肪肝に関係する数値をチェックすることになります。なお人によっては症状が出る場合もあります。その場合は、倦怠感、易疲労性、腹部の違和感などがみられます。
NASH
NASHとは
非アルコール性脂肪肝炎のことをNASH(ナッシュ:Non-alcoholic steatohepatitis)と言います。これは、お酒以外の原因で発生する非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:Non-alcoholic fatty liver disease)の患者様の1~2割程度の方にみられるとされる肝炎です。肥満、糖尿病、高血圧等、メタボリックシンドローム関連の病気に罹患している患者様によくみられると言われています。主な症状は、倦怠感や睡眠障害などですが、症状がないことも多く、そのまま放置すると10年後には10~20%が肝硬変になり、肝硬変まで進行すると年率1~3%で肝がんが発生するといわれています。
急性肝炎
急性肝炎とは
肝臓(肝細胞)の炎症が短期間で発症している状態を急性肝炎と言います。原因としては、ウイルス性、自己免疫性、薬物性、アルコール性があります。ウイルス性では、A~E型の肝炎ウイルスの感染による発症が多いですが、上記以外のウイルス(単純ヘルペスウイルス 等)のケースもあります。主な症状は、全身の倦怠感、黄疸(白目の部分や皮膚が黄色っぽくなる)、発熱、嘔吐・吐き気、食欲不振などです。
急性肝炎の多くは、安静に過ごすことで治癒していきます。ただ、ごくまれに肝機能が急激に低下して重篤化することがあります。これを劇症肝炎と言います。この場合、肝性脳症と呼ばれる意識障害などがみられます。自然に回復することは難しく、肝移植が必要となることもあります。
慢性肝炎
慢性肝炎とは
肝臓(肝細胞)に炎症が発生し、その状態が6ヵ月以上持続していると慢性肝炎と診断されます。原因の大半は、C型肝炎ウイルスとB型肝炎ウイルスの感染によるものです(感染経路は、輸血、注射器の使い回し、針刺し事故、入れ墨を彫る 等)。ちなみに慢性肝炎の患者様の7割以上がC型、2割程度がB型です。上記以外では、薬物性肝障害、自己免疫性肝炎、アルコール性肝障害等の場合もあります。
主な症状ですが、多くの場合無症状です。全身の倦怠感、食欲の低下などの症状が現れる場合もあります。慢性肝炎の状態が長く続くと、肝硬変や肝がんの発症リスクが上昇するので注意が必要です。
肝硬変
肝硬変とは
肝臓の慢性的な炎症によって、肝細胞の破壊と再生が繰り返し起こるようになります。肝細胞は減少し、そのすきまは線維組織で埋められるようになります。この繰り返しで肝臓が硬くなってしまい、肝機能が著しく低下している状態が肝硬変です。
発症の原因は、ウイルス性肝炎(C型もしくはB型)、アルコール性肝障害、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)、自己免疫性などです。2017年まではC型肝炎が原因として最も多かったのですが、2018年以降アルコール性が1位となり、NASHも全体の1割を超えるようになりました。
主な症状ですが、線維化が進む中でも肝機能が損なわれていない代償期であれば、症状が現れにくいとされています。ただ人によっては、倦怠感や食欲不振などがみられます。さらに肝硬変が進行し、肝機能の低下が現れる頃(非代償期)になると、黄疸、肝性脳症(意識障害)、腹水による腹部の膨満感、手足のむくみ(浮腫)、胃・食道での静脈瘤などがみられるようになります。
なお肝硬変は、肝がんを発症しやすくする病気であることも知られています。
肝臓がん
肝臓がんとは
肝臓に発生したがんを総称して肝臓がんと呼びます。肝臓がんは、大きく原発性肝がんと転移性肝がんに分けられます。原発性肝がんは、60歳以上の方に発症しやすく、男女比では男性の患者様の方が多く、罹患者数・志望者数とも女性の約2倍です。
原発性肝がんは、肝臓由来で発生する悪性腫瘍のことで、肝細胞がんと肝内胆管がんがあります。前者は肝臓の細胞で発生したがんになります。原因としては、ウイルス性の慢性肝炎(C型、B型)、NASH、肝硬変などが発症の引き金になります。発生間もない頃は自覚症状がみられません、進行することで腹部にしこり、張り、痛みなどが出ます。肝硬変も併発していれば、その症状も現れます。なお肝細胞がんは、原発性肝がんの95%程度を占めます。
肝内胆管がんは、肝内胆管の上皮から発生するがんで、大半は腺がんです。発症の原因に関しては、肝内結石、原発性硬化性胆管炎、肝炎ウイルスなどが関係しているのではないかと言われています。肝硬変が併発することはありません。主な症状ですが、初期には自覚症状は出にくいとされています。その後ある程度進行することで、黄疸、肌のかゆみ、だるいなどの症状が現れるほか、腹痛や食欲不振などもみられます。
転移性肝がんは、他の臓器の悪性腫瘍が転移して発生する肝臓がんです。肝臓がんは、転移性の患者様が圧倒的に多く、その数は原発性の20倍程度と言われています。肝臓は、肺と共に悪性腫瘍が転移しやすいという特徴があります。主な症状ですが、無症状のこともあれば、元々発生している部位の症状が現れることもあります。そのほか、黄疸、食欲不振、腹水、腹痛、腹部の膨満感などの症状もみられます。