ピロリ菌とは
ピロリ菌は、正式にはヘリコバクター・ピロリと呼ばれる、胃の中で生息するらせん形の細菌(体長は約1000分の4mm)のことです。ちなみに胃の中は、胃液による強力な酸性下の状態にあるので、細菌などは生存しにくいと考えられていました。そのため1979年までピロリ菌は発見されませんでした。幼少期のまだ強力な酸性が弱い状態にピロリ菌が胃の中に入り込み、住み着くと言われています。
感染経路としてはピロリ菌に感染している成人からの食物の口移しや、また以前であれば衛生環境が整わない生水を飲むことで感染していました。後者については、現在はしっかり環境が整っていますので、大半が前者による感染ということになります。胃内に入ったピロリ菌は、ウレアーゼと呼ばれる酵素を分泌し(胃の中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解)、胃酸を中和させることで生存し続けることが可能になっています。
その後ピロリ菌は定着し続けるようになるわけですが、感染したとしてもすぐに何らかの症状がみられるわけではなく、無症状の状態が続くこともよくあります。ただ感染が持続していくことで、やがて胃粘膜に炎症が起こり、胃粘膜障害がみられるなどしていきます。主な症状としては、胃もたれ、嘔吐・吐き気、空腹時や食後の腹痛、食欲不振などがみられるようになります。この状態を放置し続けると、慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんといった消化器疾患のリスクが高くなります。そのため、患者様にみられる症状や訴えなどからピロリ菌の感染が疑われる場合は、ピロリ菌感染の有無を調べる検査を行っていきます。
検査について
ピロリ菌感染の有無を調べる検査としては、内視鏡を使用する検査と内視鏡を使用しない検査の2種類あります。それぞれ主に3つの検査方法があります。その内容とは次の通りです。
内視鏡を使用する検査
検査の方法としては3種類ありますが、いずれにしても胃粘膜の一部組織を内視鏡で採取して行います。
- 培養法
- ピロリ菌を培養させていく方法で、判定結果が出るまで時間がかかります(長い場合は1週間程度)。
- 鏡検法
- 採取した組織を顕微鏡で観察し、ピロリ菌の有無を調べます。
- 迅速ウレアーゼ試験
- ピロリ菌がウレアーゼを分泌する際に産生するとされるアンモニアの有無を調べることで感染の有無を判定します。短時間(2時間程度)で結果が判明します。
内視鏡を使用しない検査方法
- 尿素呼気試験
- 吐いた息の中に含まれる二酸化炭素の量を測定し、ピロリ菌感染の有無を調べます。ピロリ菌がウレアーゼによって胃酸を中和させる際に、胃内の尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解します。その二酸化炭素の量を計測し判定します。
- 抗体測定
- 血液や尿を採取し、そこに含まれる抗体の有無で(陰性か陽性の)判定をしていきます。
- 抗原測定
- 糞便を採取し、その中にピロリ菌抗原があるかどうかを調べる検査になります。
除菌治療について
ピロリ菌検査の結果、陽性であるとの判定を受けた場合は、速やかに除菌治療を行うようにしてください。その内容は薬物療法となります。具体的には、1週間限定でプロトンポンプ阻害薬(あるいはボノプラザン)、アモキシリン(抗菌薬)、クラリスロマイシンを服用していきます(一次除菌)。除菌治療が終わったら1ヵ月後に尿素呼気試験を行います。その結果、除菌に失敗した場合は二次除菌を行います。再度1週間限定の薬物療法となりますが、その際はクラリスロマイシンをメトロニダゾールに変えて、3つの薬剤を服用していきます。また除菌治療を終えた1ヵ月後に尿素呼気試験を行います。ちなみに除菌成功率は、1次除菌で約70~90%、2次除菌で約80~90%となっています。これらで除菌できなかった場合、3次除菌も可能ですが、保険適用外となります。
なお薬物療法の期間中は副作用が現れることがあります。主な症状は、軟便・下痢、出血性大腸炎、味覚異常、かゆみ、発疹などです。